2009年9月9日水曜日

またエコ詐欺師の手先か

なんかネタ振りが飛んできましたが,一切面白い記事を書くつもりがありません.オゾン層だか温室効果だか何だか知りませんが,こんな情報が人目につくところに上がってくる時点でエコの流行に踊らされている人がいかに多いか感じさせます.

別に反エコ主義者な訳ではありません.ただ二酸化炭素を悪者に仕立て上げる業界が納得いかないのです.高い二酸化炭素排出率は高い燃焼効率の証しです.人類がパワーを得るには二酸化炭素か放射能かどちらかを吐き出さねばなりません.

(水素?あんなパンチ力のたりないものは嫌いだ)


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私たちのようなアマチュアハイブリッドロケッティアにとって,亜酸化窒素(N2O)は無くてはならない存在,というか,事実上唯一の選択肢です.ハイブリッドロケット構成するには勿論,液体,固体それぞれの推進剤が一つずつ(別に燃料が2種類あっても良いんですが・・・)が必要ですが,まずここに一つ選択肢があります.つまり

A.液体酸化剤を使う
B.液体燃料を使う

例えばBを選択するとどうなるでしょう,液体燃料として適した存在はそれこそ山のように存在します.要は燃えればいい訳ですから,液体状の有機物なら大体オッケーです.では酸化剤は?固体(安定した物質)で無ければなりません.何がありますかね,固体ロケットの推進剤として一般的なのは過マンガン酸カリウムとか過塩素酸ナトリウム,あとは硝酸塩をあれこれとかでしょうか.薬局で適当に手に入りそうな部類だと塩素とかがいけそうです,まあどれも紛う事なき劇物です.余裕で死ねます.それに,酸化剤だけで適当な後退速度と強度を有するグレインを成形しなければなりませんが,選択肢が少ない以上これは困難を伴うでしょう.

ということで無難に液体酸化剤を使うことにします.液体酸化剤を使うと,燃料はやっぱり有機物なら大体オッケーなので,やりたい放題です.ポリエチレンでもブタジエンでも何でも持ってきてください.私たちは諸所の都合によりワックスを選択しました.

さて,液体酸化剤にはたくさんの選択肢があります.これは選びやすそうですね.とりあえず性能を見て良さそうなのを見てみましょう.

A.フッ素(F)
・・・おとといきやがれ

B.液体酸素(LOx)
・・・極低温推進剤は流体ラインにたくさんおかねがかかるという欠点が有ります.圧送システムも大規模になりかねません.超小型ロケットへの適用は非現実的・・・と思いきや,採用例が有るんですね,はい,ゴダードのロケットです.気合いとセンスがあれば扱いきれるらしいですが,手の脂で発火したり,貯蔵がしんどかったりと色々問題があるのでボツです.少なくともCAMUI氏はこれで飛んでいるので,もっとやる気があれば使えるかもしれません.

C.赤煙硝酸(RFNA)
・・・貯蔵性に難がありますが,ステンレス製のタンクを使用すればなんとか可能です.常温液体,密度インパルス性も文句なし,ですが,何のためのハイブリッドなのか分かりません.ボツ.

D.過酸化水素(H2O2)
・・・中学生とかの実験で使う消毒液を思い浮かべたあなた,あれの濃度は3%.ビール飲んでも死にゃあしませんが無水エタノール飲んだら死にます.つまりそういうことです.

E.四酸化二窒素(NTO)
・・・亜酸化窒素に近く,はるか遠い存在です.選択肢Cとほぼ同じ理由により却下です.

F.気体酸素(GOx)
・・・液体が駄目なら気体でいいじゃないか.10MPaくらいで充填しておけば気畜器無しでブローダウンもできるし,比推力も十分・・・といいたい所なのですが,先にちらっと書いた密度インパルス性の点でボツを食らいます.ロケットは比推力だけではなく,質量比の面でも優れている必要がありますが,密度の低い気体を推進剤に選ぶと,それだけ大きいタンクを用意する必要があります.それでも酸素は比較的重いので,数百メートル級のロケットでは実用に足りますが・・・それ以上の大型化は非現実的と言えます.

さて,ロケットエンジンに使われる大方の液体酸化剤を見てきましたが,どれも使えそうにありません.しいて言えば液体酸素くらいでしょうか.ここで,私たちアマチュアハイブリッドロケッティアが使っているN2Oを見てみましょう.

・毒性・・・多少有り.直接吸引は厳禁.

・比重・・・水より多少軽いくらい.

・性能・・・あまりよろしくはない.窒素二つがどう見ても邪魔・・・と思いきや,重い窒素のおかげで燃料との混合比に対する性能変化が鈍感で,調整がしやすいという実にハイブリッド向けな性質がある.

・安定性,分解性・・・良好.さっきは邪魔だった窒素二つが酸素をうまく抑えている.300℃前後という「燃焼室には割とありふれているが普通はあんまり無い」という良い具合の温度から酸化剤として機能する.安定性が高い為,流体ラインの管理運用にそこまで神経質にならなくても使える.ただしアルミナ等の触媒であっさり分解するので油断は禁物.

・貯蔵性・・・良好.常温50気圧の液化ガス.

・運用性・・・良好.温度管理さえ気をつければ気畜器無しでブローダウン可.気をつけると言っても割とアバウトでOK.

というような感じとなります.これはもう使ってくれと言わんばかりの性質です.
特に性能調整が楽で安定性が高くてブローダウンで使えるのが良い.とても楽・・・というわけで,何故,スペースシップワンのハイブリッドエンジンも,私たちが作っているエンジンも,アメリカの砂漠でロケッティアがポンポン上げてる(最近は日本でも・・・)市販キットのエンジンも亜酸化窒素なのか,伝わったでしょうか.

・・・ただ,最近お財布が痛いのが否めません.何を隠そう亜酸化窒素はお高いのです.7kgで参萬伍千円也.
実は液体酸素が滅茶苦茶安かったりします.1kg100円くらい.推進剤を大量に消費する商用ベースの打ち上げロケットに亜酸化窒素の採用例が無いのは,実はこれが最大の理由なのかもしれません.


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さて,何だかんだでたくさん書いてしまいました.
全部読んでくれた人には大変申し訳ないのですが,上のは全部負け惜しみです.

そりゃあ俺だって液体酸素使いたいさ!



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以下,中の人向けの記事.

http://www.jaxa.jp/countdown/h2bf1/special/column_h2b_j.html

H-IIBの打ち上げが迫っていますが,公式ウェブサイトのコラムコーナーに見知った名前が居るようです.何やってんすか先輩!(仕事です)

3 件のコメント:

3次元CADの中の人 さんのコメント...

面白い記事、書いてるじゃん(笑)

燃焼班の中の人は2,3度読み返してみると良いですね。

>人類がパワーを得るには二酸化炭素か放射能かどちらかを吐き出さねばなりません.

んー、言われてみれば、たしかに。
ちょっと考えてみましたが、実用的な代替案はすぐには思いつきませんね。
燃料電池(水素+酸素)でモーター回すのはダメ?
(水素/酸素を作る段階で結局CO2が出そうです)

>H-IIBの中の人
おおぅ!ホントだ!
「カウントダウンする人」説はありましたけど、マジで種子島にいるんですね。

センパーイ、今度東海大にも遊びに来て下さいね♪

N2Oタンクの中の人 さんのコメント...

眼鏡にかなう記事が書けたようで,何よりですが不覚です(謎)

残念ながら地球上には生ガスの水素は存在しないんですよねえ.水素酸素の燃料電池は電気自動車から「充電」の概念を取り除いてエネルギ密度を激しく上げる魅力的なプランですが,水素の貯蔵性と安全性,水素を生成する段での電力供給の問題がクリアされるまでは難しそうです.

やっぱりこういう末端のエネルギ利用に関する次世代構想は,その根本となる基幹エネルギが世代交代するまでは難しいのでは,と考えています.それが自然発電 (太陽光とか地熱とか)なのか,原子力なのか,はたまた核融合なのかは察しがつきませんが・・・でもやっぱエネルギ密度を考えると核融合かなあ・・・

ひとまず私は化石燃料を究極まで効率よく利用する事への情熱を燃やそうと思います.石油愛してる.マジで.

3次元CADの中の人 さんのコメント...

最初に考えたときは
「水車で回転取り出して"ゼンマイ"に蓄えればいいじゃん!」
とかわけわかんない物を妄想してました。

No 電気エネルギー。
バカバカしいですけど、そういうのも面白いかな、と。

どっかのSFではカーボンナノチューブで作った円筒を超高速回転させて運動エネルギーとして貯蓄する、なんてアイデアもありましたね。