2010年10月30日土曜日

建学祭第2会場 -2nd stage-

やあ.(幾分含みのある挨拶)


同志段ボールとの鉄の掟により,彼が書いたら私も書く事になっています.
第2会場の主旨は,あまり公開されることのない写真を使って色々紹介していくものと理解しました.
私から提供できるネタとしては,エンジン開発失敗の歴史や,プロジェクトに壊された人々などなど,色々不謹慎なものがたくさんあるのですが,手元に残っている写真を色々と眺めて考えるに,今回は燃料担当の名誉挽回に努めるのが私の役目だなとの考えに至った所です.

というかぶちまけて言ってしまえば,エンジン開発失敗の歴史はあまりに痛々し過ぎるゆえに私のPCのフォルダには満足な写真がありませんでした.今度現実を直視するために色々引っ張り出して撮影してこようかなと思います.失敗作の数々を作るために七面倒くさい仕事をさせた工場の職人さんですとか,涙を飲んでもらった機体班の同志3DCADとかには陳謝する用意があります.ののしってください.




Fig.1 完成したL型エンジン用燃料

というわけで,様々な苦労の末完成したL型エンジン用燃料です.WAX燃料はそのままでは収縮やら強度の不足やら色々と問題があるため,これだけの大きさの燃料を作るには温度管理とか熱可塑樹脂の割合とかあと「妥協の度合い」とか色々苦労があったはずです.それでも彼らは指定の期日までに使える燃料を作り上げてくれました.感謝の極みです.

その燃料をエンジン担当者(何を隠そう私です)はインジェクタの部品を一つ入れ忘れるという

度 し 難 い 凡 ミ ス

により価値のないデータに費やす事になります.


Fig.2 金属粉入り燃料(通称コンブとヒジキ)

恐らく燃料開発において最も多くの失敗作の上に君臨する金属粉入り燃料です.ここまで均一に粉体を混ぜ込んだワックス燃料は他に無いのではないかと思います.この燃料により当時のエンジンは過去最高の総推力(Total Impulse)を達成することになります.高密度燃料が勝利した瞬間です.

ちなみにこの燃料を搭載したフライトエンジンはものの見事にランチャ上で破裂し,未だこの高性能燃料はフライト実績を獲得するに至っていません.信じ難いタイミングの悪さです.



Fig.3 組み込まれる燃料カートリッジ

劣悪なスケジュールの末に燃料の製作に与えられる期間は削りに削られど,彼らはいつも何とかしてしまいます.おかげでエンジン屋は余裕をもってエンジンを組み立てる事ができるのです.おまけに彼らはどんどんと完成度をあげてきます.恐ろしい人たちです.


Fig.4 エンジン解体中

そしてそんな涙ぐましい努力の結晶もエンジン屋がノリで作ったエンジンに装填され,たった2秒で燃やし尽くされます.おまけに充填された燃料は「欠片すらも残らない」のが最良の形ときたものです.彼らはよく自虐的に「おれらの努力は一瞬で消えちまう」と言っています.頑張りが鉄とアルミの塊で残る構造屋からしてみれば同情を禁じ得ません.


最後にモッコモコになっていた新燃料ですが,たった数週間で形になってきたようです.
燃料担当先生の次回作にご期待下さい.

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